第六話 九歴 如月

058 如月天狗(きさらぎてんぐ)

「へへへ。睦月姉、本当にありがとうね。勉強になったわ」
 卯月は睦月に頭を下げる。
 【睦月グランドパーティー】でのガイド見学は本当に勉強になる事が多かった。
 普段意識していない闇クエスト・ガイドオフィスもトップは気にしなくてはならないという事も知った。
 クエスト・ガイド全体の状況も見えて来た気がした。
 だが、睦月は、
「本当のトップを目指したいのなら如月のところに行きなさい」
 と言った。
「如月姉の?」
 卯月は首を傾げた。
 クエスト・ガイドとしてのノウハウはだいたい学んだ気がしたのにまだ、何かあるという事なのだろうかという素直な疑問だ。
「そうよ、さすがに、規模が規模だから如月のところはガイド見学はやってないわ。仮にできたとしても参加者は骨になって帰ることが多いかもね。骨が帰って来れれば御の字ってくらいよ」
「え?なんで??」
「簡単に言ってしまえば、如月のところはBランク以下の冒険案内はやっていないからよ。今回のような、FやEランクの冒険とは訳が違うわ。完全な命がけの案内、それが如月のところ、【如月天狗(きさらぎてんぐ)】の冒険案内よ」
 ごくっ
 睦月の言葉に思わず唾を飲み込む。
 業界最強とは聞いていたけど、まさか、如月のクエスト・ガイドオフィスはAランク以上の冒険案内しかやっていなかったとは夢にも思わなかった。
 基本冒険ランクをDかCに設定してサービスを考えていた【卯月クエスト・ガイドオフィス】とは雲泥の差だ。
 たった9名のクエスト・ガイドが大手【睦月グランドパーティー】と肩を並べられるというのにもそれで合点がいく。
 噂には聞いた事があるが、【如月天狗】のクエスト・ガイド、イコール神9(かみナイン)と呼ばれているのもそのためだ。
 社長の如月も含めて、9名のクエスト・ガイドの実力は他の会社のクエスト・ガイドの実力を遥かに凌駕する。
 その力は【睦月グランドパーティー】最強の伝説11をも超えるという。
 元々、伝説11は如月の神9に対抗して作った集団なのだ。
 本家である神9の実力は想像すらできないほどすごいのだろう。
 卯月の如月に対する印象は、なんか、どことなく、ぽーっとしていて何を考えているかわからないところがあった姉というものである。
 姉妹同士がXくんを巡り、口汚くののしりあっていた時も、一人、我関せずと言った態度だった。
 姉妹同士が争っている隙にXくん(根角)を誘い、一緒に遊んだりしていた。
 姉妹が問い詰めると
「あ〜、ごめんごめん」
 と言ってのらりくらりと争いを交わす、そんな姉だった。
 当時は如月の実力を誰も知らなかったのだ。
 Xくんにダメ出しされた時も如月は手を抜いていた。
 姉妹のクエスト・ガイドの試験の時のXくんが行った手助けも如月の時は何もする必要はないと思っていたらしい。
 能ある鷹は爪を隠す、じゃないが、姉妹達の誰もが、如月のポテンシャルの高さを知らなかった。
 如月がその実力を発揮したのは会社を立ち上げた時だ。
 彼女は卯月同様に、一人で会社を立ち上げた。
 Aランク以上の冒険だけを取り扱う冒険案内をするクエスト・ガイドオフィスとして。
 何かと無頓着だった、彼女は当初、会社の名前もつけていなかった。
 Bランク以下はやらないというのが鼻についた他のクエスト・ガイドオフィスは彼女の事を【天狗】になっていると噂し、非難した。
 如月はその【天狗】という言葉をそのまま社名に使い、【如月天狗】というクエスト・ガイドオフィスが誕生したのだ。
 そんな【如月天狗】だが、当初、卯月の会社と同じように、一人で、開拓冒険に出てはいけないという問題に直面した。
 さすがに困った如月だったが、ある時、一人のクエスト・ガイドがパートナーとして、やって来たという。
 そのクエスト・ガイドの名前は我空 桔梗(がくう ききょう)。
 現在の【如月天狗】の副社長である。
 桔梗は当初、如月を諫めるつもりで、パートナーとして参加した。
 Xくんは如月と卯月、どちらのパートナーとして開拓冒険に参加するか迷っていた時期で、如月の方には桔梗が参加したので、彼は卯月の方に協力する事にしたという話を聞いた事がある。
 桔梗は当時から最強と呼ばれていたクエスト・ガイドだが、世間の事に疎かった如月は彼女の事を知らなかった。
 そして、如月は全部、自分でやるから桔梗は見ていてくれるだけで良いと言った。
 桔梗は内心、【なるほど、確かに身の程知らずの天狗だわ】と思ったが、自分の正体を隠して、パートナーとしてついて行った。
 そして、その時の開拓冒険は今ではランクSS、上から三つ目のランクに当たる冒険だった。
 その開拓冒険を如月は桔梗の手を煩わすことなく、一人でやってのけた。
 開拓冒険だったから、ボスなどはもちろん倒す必要はないのだが、それでも、桔梗は如月の手際の良さに何度も目を奪われたという。
 そして、開拓冒険後、桔梗は自分の正体を明かし、如月に全面的に従う事を誓った。
 諫めるどころか、如月の実力の高さを目の当たりにして、感服したのだ。
 そして、その噂を聞きつけ、他に7名の猛者が集まって来た。
 【如月天狗】とは社長である如月のカリスマ性が本当の実力者だけを集めることになった正にクエスト・ガイド業界の神のごとき集団なのだ。
 如月が集めようと思って集めた集団ではなく、如月の魅力に引き寄せられた実力者集団なのである。
 その後、快進撃を続ける【如月天狗】の噂を聞きつけて、あやかろうと今まで如月を非難して来たクエスト・ガイド達が入社を希望するが、そういう事に無頓着な如月の代わりに副社長の桔梗が全てシャットアウトしてきた。
 そのため、質の高い冒険を量産出来たので、A級のクエスト・ガイドオフィスに必要な事務スタッフ四名が集まらず、B級にランク付けされてはいるが、その実力の高さはクエスト・ガイドオフィスの最高峰とまで呼ばれるほどになったのだ。
 天才と言うべきなのだろうか。
 卯月の感覚では可愛いモンスターのぬいぐるみを作って遊ぶ、無邪気な姉という印象しかない。
 だが、Xくんも彼の愛読書【ファーブラ・フィクタ】の主人公、芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)のイメージを体現出来ているのは自分ではなく、むしろ、如月の方だと言っていた事を聞いた事がある。
 その時は、何を馬鹿な事をと思っていたが、睦月の話を聞いてみると確かに如月は普通のクエスト・ガイドのレベルを超越している。
 とても卯月ではやれないこともあっさりとやってのけている。
 真似しようと思っても出来る偉業じゃなかった。

059 如月天狗の冒険案内

「資料用で良ければ、如月のところの冒険案内の映像あるけど、見てく?」
 睦月は【如月天狗】をライバル視しているため、如月の会社のサービスの映像を出来るだけ取っているのだ。
 と言っても、かなりの遠方から望遠レンズを通して、撮影しているので、資料としては十分とは言えないが、遠目で見ても、【如月天狗】の凄さは十分、伝わってくるという資料だった。
「も、もちろん、見せてもらうよ」
 ドキドキしながらも、卯月は映像を見せてもらう事にした。
 見せてもらった冒険案内のレベルはランクAだ。
 【如月天狗】としては最低ランクの冒険案内となる。
 それでも、【卯月クエスト・ガイドオフィス】の冒険案内のレベルのずっと上を行っている。
 冒険の名称は【デーモンドラゴン討伐】だ。
 この冒険案内には20メートル級のドラゴンが十数匹登場する。
 並大抵の冒険者なら、一匹でも全滅するレベルのドラゴンだ。
 もちろん、ドラゴンだけではない。
 それに匹敵するような超モンスターも数多く出現している。
 正に、生きて帰れる方が不思議な冒険案内となる。
 【睦月グランドパーティー】の撮影班も万全に準備をして、かなりの遠方からの撮影にも関わらず、約半数の6名が負傷して帰ってきたというレベルだ。
 この冒険案内で帰って来たのは【如月天狗】のクエスト・ガイド、神9の一人である清流 岬(せいりゅう みさき)だけだった。
 参加した冒険者22名の内、デーモンドラゴンまでたどり着いたのはわずか3名。
 それも、冒険者が生きていれば、岬も討伐に付き合うという条件での冒険案内だったので、デーモンドラゴンを追い詰めたものの、冒険者全員がデーモンドラゴンの吐くポイズンブレスで死亡し、冒険者全員死亡という形で、未完の冒険案内となった。
 これはこの冒険に限ったことではない。
 【如月天狗】の冒険案内は常に、死亡と隣り合わせとなっている。
 冒険者達はそれを承知で、冒険制覇の偉業達成を目指して【如月天狗】の冒険案内を受けるのだ。
 それだけ、危険な冒険なので、制覇した時のキックバックはものすごいものがある。
 数少ない達成者は国から豪邸がいくつも買えるような大金を手にしたり、奴隷上がりの元囚人が貴族の称号を得たという話もあるのだ。
 卯月はその資料映像が遠方からの撮影で逆に良かったと思った。
 近くで見ていたらとても見ていられないような凄惨な惨状だったからだ。
 遠目でも冒険者の腕や足、臓器等が吹っ飛ばされているのが確認できた。
 正直、吐きそうだった。
 危険な冒険どんと来いの姿勢で今までやって来た卯月だったが、とてもじゃないが、こんなレベルの冒険案内なんかしたら命がいくつあっても足りない状況だと思ったのだ。
 戦々恐々としている卯月に、睦月は語り掛ける。
「卯月、なんで、この冒険が必要とされているかわかる?」
「え……?」
「それはね。モンスターに人間がある程度、脅威になるという事を示すためよ」
「脅威?」
「そう。このまま黙っていたら、人間の住むところなんて、あっという間にモンスター達によって滅ぼされてしまうわ。それを防ぐ意味でも、冒険者達による、モンスター討伐というのは必要な事なの。言ってみれば、人間とモンスターの領土の奪い合いね。危険な冒険を制覇する冒険者達がいるからこそ、危険なモンスター達は侵攻してこないの。トップにいる冒険者は体を張って人間達の壁になってくれている。それを案内するトップのクエスト・ガイドもまたしかり。そうやって、この世界は成り立っているの」
「そ、そうなの?」
 ごくっと再び唾を飲み込む。
 睦月や如月は卯月が今まで描いていたクエスト・ガイドという職業のイメージとはかけ離れたところでトップ企業として、活躍していた。
 今まで呑気に強いモンスターと戦うのが楽しみだと言っていた自分が恥ずかしくなった。
 普通の人達の安全を確保するために命がけで冒険に出る。
 そんな現実がある事自体、知らなかった。
 正直、如月は仕事を選り好みしていると思っていた。
 報酬の高い仕事だけを引き受け、楽して儲けているとさえ思っていた。
 が、現実は違った。
 報酬が高いという事はそれだけ危険度が高いという事でもある。
 命がけで、危険な冒険と向き合っている【如月天狗】のような会社があるから、卯月達のような小さな会社が冒険案内をサービスとして、提供できているんだという事が理解できた。
 トップ企業は闇クエスト・ガイドオフィスとの競争で大変だと思っていた。
 が、闇クエスト・ガイドオフィスとの競争に勝つだけでは、不十分だった。
 闇クエスト・ガイドオフィスの甘い汁をすすることで冒険者のレベルを下げることも大変な事だと思うが、命がけの危険な冒険に出るという事も必要不可欠なことなんだと思った。
 今まで、どこか、馬鹿にした感じになっていたが、この時、卯月は如月の事を初めて尊敬した。

060 如月

 資料映像で【如月天狗】の凄さを目に焼き付けて帰って来た卯月だったが、そこに思わぬ客が来ていた。
 如月本人である。
「あ、卯月ちゃん、お久しぶりぃ〜、今、お菓子をいただいてます」
 彼女は相変わらずの、のほほんとした態度だった。
 とても、超絶技巧を兼ね備えたスーパークエスト・ガイドオフィスのカリスマ社長とは思えない。
「き、如月姉、お、久しぶりです、どうも」
 ぎこちない挨拶をする卯月。
 それを見た如月は、
「どうしたの、卯月ちゃん?しばらく見ない内に酔っぱらっちゃったの?」
 と言った。
 いつもだったら、自分の事を棚に上げて、
「如月姉は相変わらず、緊張感全然、無いな。ちょっとは私を見習って、こう、ビシッとしたらどう?」
 とか言うところだが、如月の会社の資料を見て来た後では、どちらに緊張感が無いかは明白だった。
 今までの自分の態度が恥ずかしくなり、真っ赤になる。
「あらら、卯月ちゃん、どうしたの?お熱?」
 心配する如月。
 彼女は自分の実力の評価にも無頓着なので、自分がいかに凄いかは全く、自覚していない。
 ただ、自分のしたい事、思った事をしてきた女性なのだ。
 その点は天然であると言っても良いだろう。
 如月はずっと開拓冒険を続けていたが、副社長の桔梗にたまには休んで欲しいと言われたので、10日ほど、休みを取る事にしたのだという。
 それで、その10日は二日ずつ、他の姉妹の会社に遊びに行く事にしたらしい。
 今日、明日は卯月の番で、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に遊びに来ているのだ。
 見ていると、あの美海までもが緊張でガチガチになっている。
 無理もない──
 如月と言えば、最強伝説を量産した、正にクエスト・ガイドの神のような存在だ。
 それが、目の前にいるという事だけでも凄いことなのだ。
 リタがサインを求めている。
 もっとも、如月は自分のサインなど持っておらず、
「署名すれば良いの?」
 と、とんちんかんな事を言っていた。
 それでもリタは
「い、一生、宝物にするでス」
 と言っていた。 
 リタにとっては憧れの人物でもある。
 憧れと言えば、加奈子もそうである。
 卯月の戦いを見て、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に入社した加奈子だが、元々は【如月天狗】に入りたかったが、残念ながら入社できなかったという経緯があるため、彼女にとっては雲の上の存在なのだ。
 卯月に対しては【お姉さま】と呼ばせてくださいと言っていた彼女だが、如月に対しては【神様】と呼んでいた。
 美海は天才肌だが、そんな彼女を持ってしても如月は特別に映っていた。
 持っているオーラが全然、違うと言った雰囲気だった。
 鈍感にも今まで全く気付かなかった卯月はますます恥ずかしくなった。
 本来であれば、他社のクエスト・ガイドが見学するのは、ある程度の手続きを必要とする。
 それは、その会社のサービスを競争相手である他社に見せる訳にはいかない部分もあるからだ。
 だが、如月のようなレジェンドともなると来てくれるだけで、どのクエスト・ガイドオフィスも大変ありがたいと思うようになる。
 むしろ、じゃんじゃん来てくださいというような感じになるのだ。
 それが如月の持っている魅力、器とも言える。
 如月が来てくれているこの絶好の機会に吸収したいところは山ほどある。
「き、如月姉。ちょっと、お手合わせして欲しいんだけど」
 卯月はそう姉に告げた。
 返答は、
「卯月ちゃんも?」
 だった。
 【卯月ちゃんも】という事は他の姉妹の会社でも同じ事を言われたという事だ。
 如月は下の姉妹から順番に回っている。
 最初の二日は水無月の会社、次の二日は皐月の会社、そして、今は卯月の会社という具合に。
 つまり、水無月と皐月の会社でもあれこれ、お願いされて来たという事だ。
 如月は遊びに来ているつもりなのに、お願いされてしまっているというのがちょっと不満のようだ。
 だが、姉妹達にとっても如月と触れられる数少ない機会を逃す手はない。
 出来るだけ多くの事を吸収したいと思っていた。
 今頃になって、如月の価値を認識したというのは姉妹達に共通するところだが。
「わ、私も、お願いします」
 と美海が続く。
 彼女には珍しく、声が上ずっている。
 他のクエスト・ガイド達もそれに続く。
 如月はここもか……というような表情をちょっと浮かべ、手合わせすることにした。
「じゃあ、こうしましょう。バトルロイヤル形式でお手合わせするという事で」
 と言った。
 つまり、自分以外は全て敵と仮定して、全員で手合わせするという事になった。
 バトルロイヤルとは言っても、全員、如月と手合わせしたいので、当然、我先にと如月に向かって言ったが、Xくん以外の【卯月クエスト・ガイドオフィス】のクエスト・ガイド5人が束になって向かって言っても、如月はしばらくよけているだけだった。
 連続攻撃を休みなくやっているのに、如月には全くヒットしなかった。
 潜在能力がまるで違うというのがはっきりわかった。
 本気でかかって来られたら、恐らく、十秒も持たないだろう。
 如月は攻撃をかわしながら、クエスト・ガイド達の隙をうまくつき、順番に、ふわっと持ち上げ、身体を浮かせていった。
 卯月達は背中の方を軽く触れられて、身体を浮かせられているが、身体のバランスをとる部分をうまく、外されていて、それから逃れる事も出来ずにおもちゃで遊ばれているかのようにただ、なす術なく、クルクルと五人で回っていた。
 そう――まるで、お手玉で遊ばれているように。
 如月にとっては遊びの一環みたいな感じで対処しているが、これは明らかに実力に天地の差が無いとできない芸当である。
 これが、桔梗をも感服させた如月の実力かと卯月は思った。
 本人は軽い気持ちでやっているが、こんな真似は如月以外は誰も出来はしない。
 卯月達の気持ちが折れた頃を見計らって、如月は全員をそっとおろして、
「そろそろ、もう、良い?」
 と言ってきた。
 ここまでくると、笑うしかなくなるようなスキルの差という事になる。
 如月にとってはどうでもいいことのようではあるが。
「お茶にしましょう」
 Xくんが声をかける。
 彼は如月との手合わせには参加しなかったが、それは、彼が参加しても如月には勝てなかったからだ。
 それだけ、彼女の実力は飛びぬけてしまっているのだ。
 ずっと、Aランク以上の開拓冒険をしていたため、いつしか、化け物なみの実力を兼ね備えてしまっているのは彼は気づいていた。
 Xくんもそれなりの修羅場は経験しているが、それでも、如月と比べるとかなり霞んでしまう。
 間違いなく、如月はクエスト・ガイドのトップに君臨していると言っても過言ではないだろう。
 彼女の目標だった自分が、気づけば、いつの間にか追い越されてしまっているという感じになっている。
 嬉しくもあるが、男性としての面子は丸つぶれかな?ともちょっと思うXくんだった。
 そんな彼も如月とは手合わせをしてみたい。
 だが、その事よりも、彼は、如月が自分を遙かに超えてしまった事を認識させてしまうのが辛かった。
 如月は元々、姉妹の中で一番、ひ弱だった。
 その彼女が頑張れたのは自分という目標がいたからだ。
 その虚像とも言えるXくんという高い目標があったからこそ、如月が頑張ってこれたという事は、如月からもらった何通ものファンレターから痛々しい程伝わって来た。
 彼女を幻滅させる訳には行かない。
 彼女はもはや、クエスト・ガイド業界の至宝と言っても良い存在なのだ。
 彼女の才能を曇らせるような行為はするべきではない。
 慎むべきだ。
 自分の虚像を高い目標としてくれるのなら、むしろ光栄な事だ。
 だから、Xくんは如月とは手合わせをしない事を選択した。
 彼女の憧れで有り続ける事、それがXくんの役目だと理解している。
 彼女の実力を見れば自分が如何に、鍛錬不足だったかがわかる。
 気を引き締めて、自らを鍛え直そうと誓うXくんだった。

061 如月の力

 それから、如月と【卯月クエスト・ガイドオフィス】の社員達による雑談となった。
 色んな話をした。
 趣味の話、好きな異性の話、失敗談、子供の頃の話、夢の話、珍しい事等の話等々、色々だ。
 そんな会話の中の一つで、如月を最強たらしめている7つの力についての話になった。
 基本的に、得意とする特殊能力は普通のクエスト・ガイドであれば、一つか、あったとしても二つか三つある程度だ。
 だが、如月の場合はそれを七つ持っている。
 これは非情に多い数と言える。
 数だけではない。
 その一つ一つが絶大な力を持っているのだ。
 だからこそ、その魅力に惹かれて、神9という特別な集団が出来たと言える。
 その中でも特に凄いのは【ファーブラ】という能力だ。
 これはXくんの愛読書、【ファーブラ・フィクタ】からもじった名前だ。
 Xくん(根角)が憧れているものは如月も憧れているのだ。
 それが、X君のファンとも言える。
 その思いは、いつしか、【ファーブラ】という特別な力を発現させたのだ。
 思う力は何よりも強いという事だろう。
 【ファーブラ】は【寓話】という意味がある。
 時間制限や能力などの制限はあるものの、如月は、フィクションに登場している何かを擬人化させて、使役することが出来るのだ。
 その能力こそ、【ファーブラ】だった。
 【ファーブラ・フィクタ】に登場するラスボス、クアンスティータの様なとんでもない化獣(ばけもの)の擬人化はさすがに無理な話だが、【ファーブラ・フィクタ】に限らず、フィクションの物語から、比較的、何でも、擬人化させて使うことができる。
 それは、【ファーブラ・フィクタ】の主人公、芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)が他の物語、世界等から、力を持ってこれるという特徴と同じである。
 Xくんが憧れていた力の一つを如月は身につけているという事になる。
 他の六つの力も超ド級の力だが、なんと言ってもこの【ファーブラ】こそ、特筆すべき能力と言って良いだろう。
 ちなみに他の六つの力は、
 【守護要塞ケイオス】、【召喚神器】、【王獣召喚】、【万能光球】、【絶技掌】、【幻影乱舞】という。
 【守護要塞ケイオス】は如月が開拓冒険の時に、うっかり契約してしまった超古代兵器だ。
 如月を主と認識してしまっていて、天高い位置から彼女をずっと見守っていて、彼女のピンチの時は何処からともなく現れ、彼女を守護する。
 【召喚神器】はかつて神が使ったとされる十種類の神器を制限付きで召喚する事ができるというものだ。
 【王獣召喚】も召喚系で王獣と呼ばれる、SSランクの超モンスター三十匹と契約していて、髪の毛数本と彼女の体力の一部を代償に召喚することが出来るというものだ。
 【万能光球】は直径30センチくらいの光の玉だ。
 削り取って剣や盾として使ってもよし、起爆要素を入れて爆発物として使うもよしというものだ。
 これもかなりの気力を必要とする。
 【絶技掌】は気を練って撃ち放つ、衝撃波のようなものだ。
 透過することも出来るので、目標とするターゲットの前に障害物などがあってもそれを壊すことなく目的のターゲットに衝撃を与える事が出来る。
 有効射程距離はなんと、2000メートル以上というから驚きだ。
 【幻影乱舞】は言ってみれば分身の術のようなものだ。
 攻撃力のある残像をいくつも作りだし、手当たり次第攻撃をするというものだ。
 ただし、目標を確認出来ないので、周り全てが敵だという事が確認してからでないと味方まで傷つけてしまう恐れのある攻撃だ。
 如月はこの七つの力を駆使して業界トップのクエスト・ガイドにまで登り詰めたのだ。
 【卯月クエスト・ガイドオフィス】では如月の能力の話で盛り上がった。

062 突然超異(とつぜんちょうい)

 如月との雑談は続き、続いて、冒険のランクについての話になった。
 Aランクの冒険でさえ、ドラゴンがバシバシ登場する冒険となっている。
 正直、その上のSランク以上の冒険というのがピンと来ない卯月達はどんなモンスターが登場するのかイメージ出来ない。
 何を基準にSランク以上の冒険にランクされるのかを聞きたかった。
 実は、Xくんだけは知っていたが、現在の卯月達のレベルで出す話では無かったため、彼女達には何も話していない。
 美海も参加した事があるのはAランクまでで、S以上というのは未知の世界の話だった。
 如月は、
「えーとねぇ、Sランクっていうのは突然超異(とつぜんちょうい)って言うのが出てくるランクかな?」
 と言うようにさらっと答えた。
 Xくんがピクッとなる。
 突然超異とはXくんが発見した突然変異の事だからだ。
 それまで、クエスト・ガイド協会の方では、モンスターが極端な変化をしたものを突然変異と呼んでいたが、その突然変異の中でも以前のモンスターからは全く考えられないレベルのモンスターへと変貌したモンスターが見つかったのだ。
 それを協会の方では突然変異を超える変異体として【突然超異】と命名したのだ。
 Xくんが当時発見したモンスターは元々、Fランクのモンスターとして認識されていた、泥モドキと言うモンスターだ。
 スキルの殆ど無い冒険者でも2、3回くらい踏んだら倒せるようなレベルしか無いモンスターだったはずだが、Xくんがそれを見つけた時は数匹のドラゴンを補食していた。
 身体も、数十センチクラスの大きさだったものが、十数メートルにまで肥大していた。
 後で調べ直したら、それは特別な突然変異を起こしている事が解った。
 その泥モドキはSSSランク、もしくはΩランクのモンスターの影響を受けているという事が解ったのだ。
 SSSランクとΩランクのモンスターは世界破壊レベルのモンスターになっている。
 発見次第、大軍隊でも送り込まなければならないような、超絶モンスターとなる。
 このSランクの泥モドキの発見により、それより上のランクのモンスターも存在する事が協会の方ではっきり、認識されたのだ。
 Xくんが根角として活躍していた頃、12企業からなる【冒険者委員会】の名誉委員長に18才という若さで就任出来たのもこの功績の大きさによるもの断だった。
 これにより、冒険者委員会だけでなく、正規のクエスト・ガイドの意見をとりまとめる、クエスト・ガイド協会にも認められる立場になっている。
 Xくんがクエスト・ガイドという世界で大きな立場を得られているのもこの事が大きかった。
 当時を思い出したXくんは鳥肌が立った。
 それは、武者震いというよりも純粋な恐怖だった。
 人類として、初めてSランクモンスターと出くわした時の恐怖は普通の人が思っているよりも計り知れないものがある。
 何しろ、今までの常識を遙かに超えるものが目の前に現れたのだから。
 初めから存在することが解って行動しているのとは訳が違うのだ。
 Xくんは当時、悪夢の白昼夢を見ているのかと思った。
 それ程、インパクトが強かったのだ。
 当時は、よく、生きて帰ってきたなと自分を褒めてあげたい気分だった。
 Xくんの帰還とそのもたらした情報により、人類は破滅の危機を一時的にしろ逃れられたのだから。
 今現在の状況で、SSSランクの冒険に耐えられるのはクエスト・ガイドでは【如月天狗】、冒険者達もたった数種類のパーティーだけだとされている。
 つまり、人類の最後の砦とされているのだ。
 そして、Ωランクの冒険に耐えられる者は居ないとされている。
 出くわしたらそれが最後と言われているのだ。
 軍隊を派遣しても、全滅するのは時間の問題だとされている。
 つまり、Ωランクのモンスターに攻め込まれたら終わりだという事だ。
 クエスト・ガイド協会と冒険者協会の共通する思いは、闇組織と関わって、冒険者、クエスト・ガイドのレベルを落とさない事を最重要視している。
 闇組織と争っている場合ではないのだが、そうも言って居られないのが実状だ。
 この話を如月とした時はさすがに、呑気な卯月も緊張した。
 その緊張を解こうと如月は
「あ、忘れてた。お土産があったんだ、これ、みんなで食べて。美味しいよ」
 と何かのモンスターの肉の燻製を渡して来た。
「あ、ありがと、如月姉。――ところで、これ、なんの肉?」
「えーとねぇ、ホールフォールフォッグっていうモンスターを固めて燻製にしたものなの、味は砂糖醤油とチリソース、ゴマ酢の三種類があるよ」
 卯月の質問に対して、聞いたことのないモンスター名を如月は答えた。
 それを聞いたとたんに
「ぶっ……げほっ、げほっ」
 とXくんがお茶を吹いた。
「どうしたの、Xくん。喉に詰まったの?」
 と卯月は心配した。
 美海はXくんの態度からそのモンスターが相当なランクもモンスターの肉だという事を察してゾッとなった。
 思わず、
「ほ、本当に食べられるのかしら……?」
 と口にしてしまった。
 思わず、せっかくお土産として持ってきてくれた如月に失礼な態度を取ってしまったと思い、
「す、すみません。失言でした」
 と言い直した。
 如月の方は全然気にしてないようで
「大丈夫、大丈夫。協会の方でちゃんと食用になるというのが実証されたやつだから」
 と答えた。
 気づいていない卯月は
「なら気にすることないね。うん、美味しいよ、これ」
 とパクついた。
 そこで、Xくんが
「それはSランクのモンスターです」
 と付け足した。
 それを聞いた卯月達は思わずズサッと後退った。
「げほっ、げほっ、げほっ」
 と卯月も喉を詰まらせた。
 よりにもよって、Sランクのモンスターをお土産に持ってくるとは思わなかったからだ。
 如月の説明によるとホールフォールフォッグとは元は何のモンスターだったか不明だが、元のモンスターが消滅して空いた空間に小さなブラックホールが発生し、それに霧の様なものが混じったものだという。
 如月の説明を聞いてもよくわからないが、ブラックホールと言えば光さえも吸収してしまうような危険なものだ。
 それが、小さいとは言え、モンスターとして、暴れ回られた日にはたまったものではない。
 近づく者は何でも吸収されてしまうだろう。
 どうやって、倒したのか気になる所だ。
 しかも、それの燻製ってどういう意味だ?
 と疑問符でいっぱいだった。
 卯月達の感想は如月は人間じゃない、人間のレベルの話じゃないだった。
 その事に全く気づいていないのか、如月はにっこり笑っていた。
 彼女にしてみれば、ホールフォールフォッグは超高級スキルアップ食材として、大変ありがたい食材でもあるので、驚かすという意味で持ってきた訳ではないのだ。
 ホールフォールフォッグがスキルアップ食材だと知ると、卯月達は先を争って、ホールフォールフォッグを食べた。
 気づけば、結構多めに持ってきたホールフォールフォッグはあっという間に食べ尽くされてしまった。
「よ、喜んで貰えたみたいで、嬉しいよ」
 と如月は多少、驚いた。
 普通のお土産感覚で持ってきたので、こんなに勢いよく食べ尽くされるものだとは思っていなかったのだ。
 卯月は、
「如月姉、次、来る時もホールフォールフォッグ、よろしくお願いします」
 と言った。
 キョトンとした表情で、如月は、
「そ、そう、美味しいもんね。解った、また、捕まえた時は持ってくるよ」
 と言った。
 簡単に捕まえられるものなのだろうか。
 卯月達は美味しいとか超高級という事よりもスキルアップ食材という事の方が大事な事なのだが、彼女はそうは受け取らなかった。

063 超急成長

 如月は二日間の【卯月クエスト・ガイドオフィス】滞在を終え、次の【弥生クエストカンパニー】へと向かって行った。
 卯月達は如月の持ってきたスキルアップ食材がどのくらいの効果をもたらすのかを確かめるため、体力測定をする事にした。
 リタなどは成長が伸び悩んでいたので、どのくらいアップ出来たかというのは大変興味深いところでもあった。
 まず、驚いたのは加奈子だった。
 1000メートル走のタイム記録が、100メートル走のタイム記録の3倍だったからだ。
 つまり、3倍以上のスピードを手に入れたという事になる。
 次に驚いたのはリタだ。
 ヒビくらいは入れられるかな?それとも、あいたたたっかな?くらいの軽い気持ちで、鋼鉄の板を割ってみようと思ったら、パンチが鋼鉄の板をあっさりと貫通したのだ。
 このように、【卯月クエスト・ガイドオフィス】のクエスト・ガイド達は自分の持っていた本来の記録より少し高めの記録に挑戦するが、予想を遙かに上回る成長をしていた。
 ちょっとどころではなく、超急成長と言えるべき成長だった。
 ホールフォールフォッグのようなものを普段から食べていれば、それこそ、人間離れした力を【如月天狗】が手にしているのも納得いくと全員が思った。
 同じ少人数のクエスト・ガイドオフィスで天地の差があるのはこれかと言わざるを得なかった。
 お土産の食材を食べただけで、これだけの変化があるのだ。
 普段からそういう食材を食べている彼女達は想像も出来ない程の全くの別次元の人間になっているのだろう。
 卯月達は楽しくなって来て、朝から晩まで体力測定を続けた。
 色々と自分の現在の実力を試したのだ。
 普通はこんなに連続で体力測定をすれば、途中で息切れして、ろくな成績は出せないのだが、10日以上かけてやるような数多くの測定を一日でやり、その全ての記録が、前回の記録を大きく上回り、さらに、終了しても体力は全然残っていた。
 むしろ有り余っているという表現の方が近かった。
 明らかに基礎体力自体が跳ね上がっている。
 恐らく、開拓冒険も、CやDランクではなく、Bランクにしたとしても余裕を持って帰ってこれるくらいの力はついているのではないかと思われる。
 卯月は、ズルい、こんな事されてたら、差がつくの当たり前だよと思った。
 【如月天狗】の力を改めて思い知った感じになった。
 翌日、体力測定のついでと言わんばかりに、開拓冒険に出た。
 そこで気づいたのは頭の回転も心なしか速くなったという事だった。
 決断力なども、基礎体力の上昇と共に、増している。
 クエスト・ガイドスキル自体が全くの別人の様に、アップしたと言って良いだろう。
 正直、A級クエスト・ガイドオフィスと言っても、それは名ばかりで、実力としてはB級クエスト・ガイドオフィスレベルだった【卯月クエスト・ガイドオフィス】だったが、今は名実共に、A級なみの実力がついたと言っても決して過言ではないレベルにまで到達出来たと言って良くなった。
 だが、危険なのは自分のレベルを見誤るという事だ。
 認識が自身のレベルと合っていないと思わぬ怪我とかをする事にも繋がりかねない。
 理由は自分の価値を過大評価したりして、レベルに合っていない冒険をしたり、自分の思っている以上の力が出てしまい、勢い余って、顧客である冒険者達を傷つけてしまったりする事も考えられるからだ。
 クエスト・ガイドにとって大事なのは、スキルアップも当然、必要なのだが、それよりもまず、自分というものをしっかり理解しているという事だ。
 敵わないと判断したら、撤退を選択するのも、自分の実力をしっかり理解しているから、出来ることでもある。
 【卯月クエスト・ガイドオフィス】のクエスト・ガイド達に必要な事は自分の実力というものをしっかり把握するという事だ。
 それが、何よりも最優先事項と言える。
 敵を知り、己を知れば百戦危うからずというやつである。
 ちなみに、スキルアップ食材のホールフォールフォッグは万人にスキルアップをもたらせるという事ではない。
 【如月天狗】の様な別次元の実力を持つ者達には大して効果はない。
 言ってみれば、卯月達は未熟であったが故に、急成長出来たと言えるのだ。
 つまり、今までは問題外のレベルだったという事だ。
 現に、元々、実力のあった美海も確かにスキルアップはしたが、卯月達ほどの劇的な急成長はしていない。
 あくまでも、スキルの底上げ食材でしかないのだ。
 そこに、如月と卯月達の認識の違いがあった。
 【如月天狗】はその基礎体力の向上の上に更なる努力や工夫などもしているのだ。
 高レベルになってからの年期もまた、違うのだ。
 スキルアップ食材をちょこっと食べただけで、如月の会社に追いつけると思ったら、大きな間違いなのだ。
 そのことだけは理解しないといけない。

 超恩恵をもたらしてくれた如月だったが、10日間の休養を終え、仕事再開として、向かった開拓冒険で消息を絶ったと連絡が来た。
 その報告は睦月から受けた。
 あれほど強かった、如月が、消息を絶つレベルの開拓冒険とはまさか、Ωランクの……と思う一同。
「如月姉……」
 卯月は如月の行方不明を悲しんだ。

064 緊急事態

 卯月達の心配を余所に、如月はその後、10日後には安全が確認された。
 如月に限ってもしもの事はないとは思うが、行方不明というのはちょっと心配だった卯月は一安心した。
 だが、如月がクエスト・ガイド協会に持ってきた情報は緊急事態と言って良かった。
 今まで、存在しているかどうかも曖昧だった、Ωランクのモンスターが確認されたというものだったからだ。
 如月でさえ、帰ってくるのがやっと――、一緒に居た【神9】の一人が負傷して帰ってきたという。
 【神9】と言えば、無傷で帰ってくる事でも有名だったが、負傷して帰ってきたという事はクエスト・ガイドの世界では衝撃が走った。
 それだけヤバい、モンスターが居るという事の証明でもあるのだ。
 だが、それはSSSランクでもあり得る事だ。
 しかし、如月の口からはっきりとΩランクという言葉を聞いたのだ。
 それが問題だった。
 幸い、Ωランクのモンスターは人間界に興味を持っていなかった様に感じられたと言っていたが、それでも、Ωランクの存在は人類では太刀打ち不可能レベルのモンスターが存在するという事の証明でもある。
 戦って勝てる相手ではないのだ。
 しかも、そのΩランクのモンスターは3体確認されたという事が最も重要だった。
 その3体は3竦みの様に対立し、他の存在よりも他のΩランクのモンスターを牽制しあっていた。
 だから、人間界に興味を持っていなかったと判断できたというのだ。
 その均衡が崩れた時、恐ろしい事が起きるかも知れないという事だ。
 Ωランクと言っても、力の差はそれぞれあるだろう。
 Ωランクのモンスターの力が全く一緒だという事は無いのだ。
 必ず、少なからず力の強弱は存在する。
 牽制しあっているという事は戦っていないという事でもある。
 戦い合って、それぞれの実力が証明されてしまえば、均衡は崩れる事にもなりかねない。
 だから、なるべく平和的に、その3竦みを落ち着かせることが急務となった。
 如月はほぼ、とんぼ返りという状態で、怪我した一人も含む、【神9】全員を招集。
 【如月天狗】総掛かりで、事態の収拾に向かった。
 その時、トップ冒険者も全員が参加して、ついて行った。
 如月レベルのクエスト・ガイドや冒険者達が命がけのレベルの事件ともあり、クエスト・ガイド、冒険者の両業界では藁にも縋る思いで、事態の終息化を望んだ。
 幸い、無事、事は済んだとの事だった。
 だが、今回の事で、Ωランクに目をつけられたら、それで、破滅だというのが、人々の間では、はっきりと認識された。
 その事は少なからず、冒険者となる者の減少を意味していた。
 どんなに頑張ってもΩランクには敵わないという事が誰にでもはっきりと理解されてしまったからだ。
 今までは、トップクエスト・ガイドかトップ冒険者が立ち向かえば何とかなると思われて来たが、人間ではどうあっても敵わないと認識されてしまった以上、尻込みする人間が出てきてしまうのは避けられない事態と言えた。
 かと言って、冒険者になる者が完全に居なくなったと言う訳ではない。
 それでも人類を救うんだと思い、今まで以上に努力を続ける強者も出てくるだろう。
 そういう人間がいつの日かΩランクのモンスターを倒せるレベルにまで成長出来ることを願う者も数多くいた。
 今回の事で、如月達は責任を感じ、更に自分の身体を極限まで鍛えるだろう。
 人類はまだ、諦めたという訳ではないのだ。
 そして、Ωランクのモンスターを煽った疑いがあるとして、闇クエスト・ガイドオフィスの摘発の運動が高まった。
 今までは必要悪の一つとして認識されてきた闇クエスト・ガイドオフィスだったが、国自体が排除の方向で動き出したのだ。
 闇クエスト・ガイドオフィスと裏で繋がって来た政治家や権力者も次々と逮捕されていった。
 未曾有の恐怖を体験したというのが、集団心理として、悪いことをしていると思われている闇クエスト・ガイドオフィス排除の方向へと向かったのだ。
 もちろん、これは濡れ衣ではある。
 闇クエスト・ガイドオフィスの力で、Ωランクのモンスターをどうこう出来る問題ではないし、もし動かせたとしても自分達の首を絞める様なモンスターと関わりを持つ訳がない。
 もし、利用するのであれば、もっとランクの低いモンスターを選択するだろう。
 日頃の行いが祟ったのか、闇クエスト・ガイド達はやってもいないことで、悪者の人身御供として、追い詰められていた。
 人間の死にたくないという思いが、悪人を用意したのだ。
 だが、これは正しい事であるとは言えない。
 闇クエスト・ガイドオフィスは確かに悪いことをしているが、それと今回のΩランクのモンスターの出現は無関係だ。
 無関係な事で人を追い詰める事は正しい人間のする事ではない。
 中には闇クエスト・ガイドオフィスを擁護する集団も現れて、人間界は大きく揺れた。
 それほど、Ωランクのモンスターの出現というのは重要な事だった。
 力の弱い存在は強い存在の一挙手一投足に怯えたりもするのだ。
 それが、束になっても敵わない存在ならば、なおのこと。
 正しい判断というのがしにくくなってしまう。
 中には世を儚んで……という選択をする者も出るくらいだった。
 願わくば、Ωランクの出現は無かった事にしたい。
 それが、人間達の総意だった。

065 見舞いから得たもの

 今回の件で如月が入院したというのを聞き、卯月は会社を臨時休業にして、社員総出で、彼女の入院している病院を訪れた。
 如月を見舞うためだ。
 彼女にはクエスト・ガイド全員のスキルアップの切っ掛けを貰ったという恩もあり、彼女の入院というのは感謝の意を示すには丁度良いタイミングではあった。
 入院している彼女に対して丁度良いと言うのも失礼な表現ではあるが。
「ゴメン、如月姉、ゾロゾロとみんなで。みんな行きたいっていうから仕方なく……」
「ううん、良いよ。ありがとうみんな」
 卯月達に対し、嫌な顔一つせず、にっこりと笑う。
 これは一つの人徳と言えるだろう。
 そんな裏表の無い彼女を慕ってやってくる者も少なからずいるだろう。
 クエスト・ガイドも客商売である以上、人を引きつけるという事も重要な要素の一つとなる。
 これぞ、トップクエスト・ガイドの魅力と言ったところだ。
 ちょっと深傷を負ったものの、体力的には問題ないため、他の入院患者の迷惑にならないようにするのであればという約束で、卯月達の見舞いは病院側に許された。
 が、見舞いに来る者が多く、病室に収まりきらないので、見舞いの品は病院側で預かるという事になってしまった。
 何となく、手ぶらで来たみたいで、少し、居心地が悪くなったが、如月の方は良く来てくれたというような歓迎ムードだった。
 終始、賑やかなムードだった。
 が、如月の部屋は防音設備付きの個室だったので、外には響かなかった。
 入院当初、彼女は他の患者と同じ相部屋だった。
 だが、見舞いがあまりにも訪ねてくるので、気を利かせて彼女は個室に移ったのだ。
 それが、彼女の優しさでもある。
 強いだけではない――
 さりげない気配り、優しさというのも兼ね備えている――
 それが九歴 如月という人物だった。
 まさに、クエスト・ガイド界の至宝。
 そんな姉を卯月は誇りに思った。
 如月は、
「ゴメンネ。負けちゃった」
 と少し、寂しそうに言った。
 それは、クエスト・ガイドの期待を一身に背負っていたがクエスト・ガイドの威信を失墜させてしまった事のお詫びだった。
 だが、それは、周りが勝手に彼女に期待しているだけの話だ。
 本来、如月が背負う必要のないものだ。
 だが、如月が負けたイコールクエスト・ガイドでは及ばない冒険があるという印象は決定的となってしまった。
 それだけ、如月や【如月天狗】の期待度は高かったと言える。
 よく見ると目が少し赤い。
 恐らく、期待を裏切られたとして、誹謗中傷もあるのだろう。
 見舞客の人間が来る前にこっそり泣いていたのかも知れない。
 だが、そんなそぶりは卯月達には見せない。
 彼女達に気を遣わせないためにだ。
 そんな如月の気遣いを感じたXくんは、
「如月さんの身体に障るといけないので、もう少ししたら、我々はおいとましましょう」
 と言った。
 卯月達は頷いた。
 卯月達もひっきりなしに見舞客が来ているだろう状況では如月がゆっくり休めないだろうと判断した。
 本当は、Ωランクのモンスターの事を聞きたかったが、そんな事を聞ける様な状況ではなかった。
 Ωランクのモンスターの話はすなわちイコール、如月達の敗北の話にもなるからだ。
 傷口をえぐるような真似は出来ない。
 卯月達は当たり障りのない話をして、病室を退出した。
 卯月は、いつか、如月の敵を討ちたいと思うのだった。
 だが、今の彼女にはそれを叶えるだけの力はない。
 如月にあっさりとやられるようなレベルで、彼女の代わりにΩランクのモンスターを倒すなど、おこがましい事だ。
 それに、如月は退院したら、自ら鍛え直すだろう。
 そして、Ωランクのモンスターに自らリベンジするだろう。
 彼女にはその力は十分あると思うし、今まで、不可能を可能に変えて来たのだ。
 今回に限り、無理だとは決して思わない。

 卯月達は如月の入院している病院の帰りに、クエスト・ガイド協会の本部を訪ね、如月達が敗走することになったΩランクのモンスターの資料を取りそろえた。
 まだ、未確認だったものが確認された状態なので、正式名称はついて無く、Ω001、Ω002、Ω003の呼称で記されていた。
 資料には写真は無かった。
 恐らく、【如月天狗】のクエスト・ガイド達の情報を元に、作成されたイラストだろう。
 だから、正確なものかどうかは解らない。
 だが、近い容貌をした存在なのだろうというのは推測できる。
 卯月達は目指すべき頂点に現在、君臨する三体の超モンスターを確認した。
 Ω001の姿形は、全長3メートル前後と思ったよりも小さい。
 両性具有というべきなのだろうか?
 たくましい男性の肉体にしっぽがついた姿をしていて、首の位置から女性の上半身が生えている。
 顔は魚のようなものだと表現されている。
 注意書きとして、姿が度々変わっていて、比較的、長い間、確認出来たのが前述の様な姿だったという事が書かれている。
 まるで、本来の姿を模索して変身を続けているようだったとも書かれている。
 Ω002の姿形は、ハリネズミの針のような突起物を持った甲羅を持ち、十カ所の穴からは竜の様な首が飛び出して来る化け物と書かれている。
 体長は70メートル前後と結構、大きいタイプだ。
 甲羅の部分の針もウネウネと飛びだして来ると書かれている。
 Ω003の姿形は金色の獅子の様な姿で、ただし、顔の部分はワニのような感じで、尾は3本あると書かれている。
 この三体に共通するのはこの確認されている姿は恐らくSSSランクのモンスターのもの、遺体ではないかと言うことだ。
 このモンスター達の体内にそれぞれ、何者かが入っていて、それが本当のΩランクではないか?という事が記されていた。
 つまり、確認されたΩランクは全て、寄生タイプであり、SSSランクのモンスターを捕食しながら、争っていた――
 食事中の争いではないか?という事だった。
 気を測定したら測定不可能の数値を示したので、何とも言えないのだが、印象として、目に見えている姿というよりも、その中に何か居る。
 何か触れてはならないような恐ろしい何かが居るという気配がしたという。
 【如月天狗】とトップ冒険者達は、その中に居る何かを表に出さないようにしながら、誘導し、三体をそれぞれ別の場所へと引き離したという。
 中に居る何かを見たら、その場で殺される、気がした。
 かつて無い戦慄を感じたと記されていた。
 結局、この資料を読んでも、解る事は少ないし、本当のΩランクのモンスターの情報ではない可能性も高い。
 だが、トップクエスト・ガイドオフィスを目指すので有れば、避けては通れない事。
 今はそのレベルに達しなくてもいつかはそれと向き合って行かなければならない事でもある。
 今は確かに全く敵わない。
 今、このモンスターと出くわしたら死は免れないだろう。
 だが、それを避けていたら、その瞬間に、クエスト・ガイドとしては二流以下、三流、四流、五流の烙印を押されても文句は言えない。
 クエスト・ガイドと冒険者は常に、上のクエスト、冒険を目指して行かなければならないのだ。
 例え、それが、どんなに途方もない化け物との戦いが待っていようとも。
 クエスト・ガイドはその化け物と最初に向き合って、冒険者になるべく正確な情報を渡すのが仕事。
 時には、冒険者と協力して、その化け物を何とかしなくてはならない事もある。
 逃げる訳にはいかないのだ。
 自身の勇気と世の中の平和を守るために、冒険者とクエスト・ガイドは存在する。
 そのために、お金を貰って仕事をしているのだから。
 逃げるのであれば、クエスト・ガイドという仕事を辞めた方が良い。
 その人間にクエスト・ガイド、冒険者という職業は向いていないのだから。
 冒険の成功には、それに見合った報酬もある。
 そのロマンを求めて、冒険者達、クエスト・ガイド達は日々、精進をしているのだから。
 卯月達は、クエスト・ガイドの試験勉強で勉強した、クエスト・ガイドとしての矜持(きょうじ)を改めて実感として感じていた。
 高い目標を持つからこそ、その目標に向けて、更なる進化をクエスト・ガイドはしていく。
 危険極まりないからと卯月達は父、師走の妨害にあったが、それを全て、はね除けてみんなクエスト・ガイドになった。
 その時の覚悟は決して遊び半分でやった事ではない。
 命を落とすことだってある。
 だけど、命を賭けても、やり甲斐があると思ったからこそ、姉妹は全員、この職業を選んだのだ。
 最初は、Xくん(根角)に認められたかったから始めた事だが、それだけでは、超難関だった、クエスト・ガイドの試験は通らない。
 姉妹はそれぞれ、やがて信念を持って、クエスト・ガイドという職業に向き合う様になり、そして、プライドを持って、この職業に就いたのだ。
 卯月もそれは同じ事だ。
 やり方は随分、間違えた。
 失敗の連続だった。
 それでも、前を向いてやってきた。
 全ては、トップクエスト・ガイドになるために血の滲むような努力と工夫、勉強をし続けて来たのだ。
 姉妹の中で、敵が強いからと言って逃げ出す様なヘタレは一人も居ない。
 姉妹それぞれが切磋琢磨し、己を磨き、仲間と共に、更なる上を目指すのだ。
 姉妹の周りの人間も一緒だ。
 共に、遙かなてっぺんを目指して精進していく。
 そういう上昇志向のある人間がいるからこそ、このクエスト・ガイドという職業はなりたっている。
 卯月や他のクエスト・ガイド達、事務スタッフの決意のこもった表情を見たXくんは、マスクの中の表情を緩めた。
 【あぁ、……戻って来て良かった】
 そう思うのだった。
 卯月は、
「さぁ、如月姉には負けてられないね。私達も頑張って行こう」
 と宣言した。
 それを否定する社員は一人も居なかった。



登場キャラクター説明

001 九歴 卯月(くれき うづき)
九歴卯月
このお話の主人公。
幼馴染みの根角(ねずみ)の夢を引き継いでクエスト・ガイド(冒険案内人)を目指す女性。
6人姉妹の4女で他の5人は全て異母姉妹。
前向きなのは長所だが、注意力がいまいちたりず、おっちょこちょいでもある。
心情的な事に対してはかなり鈍い分類にはいる。


















002 江藤 根角(えとう ねずみ)=審査官=X(エックス)君
Xくん
卯月の幼馴染みの青年。
卯月達6人姉妹の目標の存在でもある。
十八の時に行方をくらましている。
姿を隠して、姉妹の試験の審査官となりX(エックス)君として卯月の会社に入る。




















003 九歴 師走(くれき しわす)
九歴師走
九歴グループの総帥にして卯月の父。
最初は危険な仕事であるクエスト・ガイドに娘達がなるのに反対して、妨害工作をする。
が、次々と合格する娘達を見て気持ちを変える。



















005 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)

この物語では架空の創作の物語とされている【ファーブラ・フィクタ】の主人公。
根角もそうだが、根角の影響から卯月達姉妹の冒険の教科書として彼の行動は使われる事になる。


006 九歴 弥生(くれき やよい)
九歴弥生
九歴6姉妹の三女で卯月の姉。
【弥生クエストカンパニー】の社長をしている。
世話好きでもあり、姉妹達を何気なくサポートしようとしていたりする。
会社の規模としては姉妹の中では、睦月の会社に次ぐ大所帯で、129名のクエスト・ガイドを社員にもつ。
Sランクを頂点として、続くAからCまでのランク付けをしている。















010 リタ・ウェーバー

【弥生クエストカンパニー】のCランククエスト・ガイド。
センスはあるのだが、好戦的なのが玉に瑕。
元、プロボクサー。
卯月との対戦後、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に入社する。


011 ブリット・ウェーバー

事務スタッフとして、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に入社した男性。
リタの従兄弟。
クエスト・ガイドの試験を優秀な成績でクリアするも、血を見ると失神するという致命的な欠点が見つかり、クエスト・ガイドの道から外れる。
リタの事が大好き。


012 スティーブ・ウェーバー

事務スタッフとして、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に入社した男性。
リタの従兄弟で、ブリットの五つ年上の兄。
元、冒険者だったが、不注意からの事故で肩を壊し、冒険者としての道を断念。
ブリットの事を溺愛している。
リタから恋されているので、三角関係の様になっている。


013 皆川 彰人(みながわ あきと)

事務スタッフとして、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に入社した少年。
が、正体はエンシェントドラゴンの魂を入れて蘇生させた死体。
月に一度、少年の両親に会いに行くという条件で、エンシェントドラゴンは彰人少年として、活動している。
本来、クエスト・ガイド志望だが、肉体が18才に育つまでは事務職という条件になっている。
見た目は子供でも幅広い知識を持つ。


014 桜咲 真尋(さくらざき まひろ)

事務スタッフとして、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に入社した女性。
天才肌ではあるものの人間関係が上手く行かず、研究所を転々としていたのをXくんにスカウトされてやってきた。
A級クエスト・ガイドオフィスになれば研究所を割り当てて貰えるという条件で、入ってきた。
研究者と事務スタッフの二足のわらじでやっていく。


015 九歴 皐月(くれき さつき)
九歴皐月
九歴6姉妹の五女で卯月の妹。
【皐月クエスト・コーポレーション】の社長をしている。
姉妹の中では戦闘能力は高く無いが、それを補うに十分な、アイテムの修理や改善作業を得意としている。
自分のミスをすぐに修正出来る強い面も持っている。

















024 九歴 水無月(くれき みなづき)
九歴水無月
九歴6姉妹の六女で卯月の妹。
【水無月クエスト事務所】の社長をしている。
芸能活動をしながら、クエスト・ガイドという職業を広めている。



















032 鈴里 加奈子(すずさと かなこ)

【水無月クエスト事務所】から、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に移ってきたクエスト・ガイド。
卯月の戦いに感動し、お姉様と呼ばせて下さいと言い寄ってきた。
元、冒険者で、【磁力操作】という特技を持っている。


033 宮崎 龍花(みやざき りゅうか)

【水無月クエスト事務所】から、【卯月クエスト・ガイドオフィス】に出向してきたクエスト・ガイド。
口下手で、寡黙な性格。
【エアソルジャー】という特殊能力を持っている。
持ってきたコスチュームに空気を送って、人が着た様な状態を作り出すことが出来るという能力。


036 弓酒 美海(ゆみさか みうみ)

卯月の会社に最後に入ったクエスト・ガイドで、Xくんの弟子。
元、冒険家で美人であるため、何度も有名雑誌に載った女性。
Xくんを負かしたら、彼を婿として、向かい入れるつもりでいる。
何でも出来る完璧超人。


037 九歴 睦月(くれき むつき)
九歴睦月
九歴6姉妹の長女で卯月の姉。
【睦月グランドパーティー】の社長をしている。
姉妹の中では最大手の会社を経営している。
次女、如月に対してライバル心を持っていて、彼女の会社のクエスト・ガイド神9に対抗して、最高レベルのクエスト・ガイドを伝説11(レジェンド イレブン)として切り札に持つ。















037 九歴 如月(くれき きさらぎ)
九歴如月
九歴6姉妹の次女で卯月の姉。
【如月天狗(きさらぎてんぐ)】というクエスト・ガイドの社長をしている。
姉妹の中で最強と呼ばれている。
また、【如月天狗(きさらぎてんぐ)】はB級クエスト・ガイドオフィスでありながら、最強のクエスト・ガイドオフィスとも評されている。
理由は量より質を重んじていて、十段階ある冒険案内(下からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、Ω)の内、A級以上の冒険案内しか請け負わないという所からくる。
そのため、【如月天狗(きさらぎてんぐ)】の案内する冒険をクリアすることは冒険者として最高のステータスとされている。
ちょっと天然系でもある。
【ファーブラ】、【守護要塞ケイオス】、【召喚神器】、【王獣召喚】、【万能光球】、【絶技掌】、【幻影乱舞】という七つの特技を持っている。




038 我空 桔梗(がくう ききょう)

【如月天狗(きさらぎてんぐ)】の副社長にして、神9の一人でもあるクエスト・ガイド。
経営に疎い、如月の代わりに、会社を取り仕切っている。
元々、最強と呼ばれていたクエスト・ガイドだったが、如月の見事な仕事に感服し、以後、彼女のサポートに徹するようになる。


039 清流 岬(せいりゅう みさき)

【如月天狗(きさらぎてんぐ)】のクエスト・ガイドで、神9の一人に数えられる猛者。
実力は業界トップクラス。